836円で買った地獄を体験する権利
『転生したら破滅フラグしかない悪役貴族だった件~エルフ、獣人、吸血鬼をメイドにしました~』
作者がTwitterでかなりエゴサをするタイプだったのでタイトルはこっちに書いた。
よく思うのだが、何故異世界チートもののタイトルは『○○な件』というものが多いのだろうか。正直一昔前のオタクを見ている気分で寒いとしか言いようがない。
初めに
『ファイナルソード』や『プペル』からも、私が悪い意味で話題になった作品を自分の目で確認しなくては気が済まない性分なのは理解してもらえたと思う。
しかし、そんな私でも見ずに「Not for me」と言ってしまう部類の作品がある。
それがエロ要素を売りとしたライトノベルだ。
別に行為の描写がある作品自体が苦手というわけではない(私の好む百合漫画も結構過激なものが多いし)。ただ感覚の問題なので説明しにくいのだが、簡単に言えば異世界転生してチートで無双する主人公が何故かモテて複数のヒロインとするといった内容がかなり苦手なのだと思っている。
それでも、興味を持ってしまう作品はある。
例えば黙れドン太郎こと『物理さん』。あれもかなり私の苦手な要素を含む作品なのだが、好奇心に負けてコミカライズ版を全巻購入してしまった。
そしてこの作品もある日いつものようにTwitterをしていたところ、悪い意味で盛り上がっていたのが目に入った。
・射〇シーンが合計10ページ以上
・連続して2ページにもわたって描写されるシーンもある。
正直最初はただのデマだと思ったが、ご丁寧に画像付きのツイートもあった。
そこには本当に男性が出している効果音が長ったらしく書かれていて、気づけば私はAmazonで購入していた。……はっきり言って死ぬほど後悔している。
ストーリー
おおまかなストーリーは割とテンプレのような内容だ。
主人公がある日前世の記憶を取り戻し、ここが前世でプレイしたゲームの世界で、自身が作中で後に殺される悪役貴族であることに気づく。
数年後訪れる破滅を回避するため、主人公は自身のイメージを良くしようと行動を開始するが、そのせいでゲーム内のメインキャラが彼の周りに集まっていき……といった感じだ。
所謂悪役令嬢ものと呼ばれるジャンルの主人公を男に変えたという印象だ。
自身が悪役なことに気づき、イメージアップに取り組みゲームキャラであるヒロインたちを遠ざけようとするがそれが逆にヒロインたちに好かれる要因になってしまうという、私が読んだことのある悪役令嬢ものに酷似した作りになっている。
それをパクリとまで言うつもりはなく、恐らくテンプレなんだろうなと思いながら読み進めていた。
でもタイトルまで似てるのはどうかと思う。単語入れ替えたらほぼ同じじゃん。
本当に長ったらしい描写
射〇だけでなく、他の効果音も大げさだと感じてしまった。
例を挙げると……
『──ジュボォオッ! ジュプププププッ、プツッ! ズボジュプジュボボォオオオオオオーーーーーッ!』
Q.これは何の効果音でしょう?
A.挿入時の効果音
……流石に笑ってしまった。
話題の射〇時の効果音も一度や二度ならインパクトがあって別に否定するまではいかないのだが、本当にしつこいくらいに描写される。
作者がTwitterにて「主人公が何リットルも出せるという表現」と弁明していたのを見かけたが、正直あまりの回数の多さに文字数稼ぎを疑っている自分もいる。
たしかにその行為のインパクトを表現するためにも地の文で大袈裟な効果音を書くというのは正しいと言えなくもない。しかし何度もされては流石に飽きてしまう。
初回とラストだけなら文句を言わずに読むことができたかもしれない。
……多分無理だったと思う。
オタクに都合のいいヒロインたち
作品では3人のヒロインが登場するが、まあこの作品に限った話ではないがヒロインがチョロすぎるとしか言いようがない。
一応主人公のことを好きになるきっかけが描写されているだけマシなのだが、やはりどうしてもそう思ってしまう。
・シャルロット
一番印象が薄いキャラ。
一応ゲームでは主人公と説明されるのだが、正直どんなにゲームではヤバイやつと言われても実際本編で描かれるのは頭のおかしい痴女なのでキャラと読者で評価が乖離してしまっている。ある意味転生ものの宿命を背負ったキャラなのかもしれない。
ほんとに語る要素が他二人に比べてなさすぎる。プレイも普通だし。
異常なのはラストの妊娠してる彼女たちとしたことくらいだろうか。作者は一度妊婦の体験をしてほしい。
・エリシア
女騎士らしいけどそこまで女騎士要素がない。そもそも戦闘パートがほぼないので完全にお飾り。
毎回入るヒロインが主人公を好きになるパートがダントツで読みづらい。
地の文で「エリシアは~~」と書いた次の行では「私は~~」といきなり視点が変わって混乱してしまう。これは彼女の気持ちを表した文章なんだなと理解できるが、せめて「自分は~~」とかで統一してほしかった。台詞内で改行してかえって読みづらくなっているのも含めて、書き方の癖が強すぎる。
キャラとしてはプレイの内容がきつすぎて、そのシーンは適度に休憩しながら読んでいた(お尻を使ったプレイがあまり好きではないので)。いやでもア〇ルに手突っ込んで腸壁ごしにオ〇ニーは好き嫌い関係なくきつすぎて無理。何食ったらそんなこと考えられるんだ?
・シエラ
吸血鬼のヒロインだが、主人公が回復魔法で身体の仕組みを変えて日光への耐性を付与するという展開に思わずスマートフォンを投げそうになってしまった。
そもそも吸血鬼が日光を嫌うのはアイデンティティでありそれを消す必要性が理解できない。生物は日の下を歩くのが当然というのは人間の価値観でしかなく、夜行性の動物も数多くいるはずだ。
そして何よりも回復魔法でそういった身体の仕組みを変えるというご都合展開が理解できない。それなら最初から拷問で大火傷したヒロインを治療する展開の方が自然に読むことができた。
見た目は一番好きなので本当にそこが残念で仕方がない。でも子宮脱は嫌いなのでやっぱり無理。
キャラの倫理観
こういった作品で一々倫理観を指摘する方がおかしいとは思うのだが、流石にキツイ箇所がいくつかあった。
主人公の能力は元々あった才能を伸ばした結果チート級になったというもので、よくあるチート主人公よりかはまだ好感度があった。……序盤は。
恐らくこの作品のメインである、女の子とするパートになってからは好感度は下がる一方だ。言いすぎてもネットで暴れている過激派フェミニストになりそうなのでオブラートに包むが、女性キャラをオ○ホ扱い(言いがかりではなく本当に地の文でそう書かれている)した挙句、女性の身体が耐えきれないレベルの量を出して殺しかけている。
そんな主人公のことを『私に優しくしてくれるから』という学生のオタクにありがちな理由で好きになって毎晩身体を捧げる女性キャラたちのこともあまり理解できない。
主人公曰く死ぬ前に脳細胞に回復魔法をかけているのでセーフらしい。……アウトだよ。
ラストでは主人公が死者の蘇生以外なら治療できるようになったと説明されているが、普通に蘇生してるじゃんとツッコんでしまった。
良かった点
・イラストが可愛い。
・良い意味でも悪い意味でもスラスラ読めてそこまで時間がかからずに読破できる。
・文章のインパクトだけなら人気作品にも引けを取らない。
気になった点
・孕めとか毎回言ってるくせにラストまでヒロインたちが妊娠しないのは正直ご都合としか言いようがない。
・マジで効果音が長ったらしい。読書感想文であらすじを使って文字数稼ぐタイプかな?
・台詞内でも改行しているせいで所々地の文と混ざって読みづらい部分があった。これはなろう作家だからなろうで読んだ時の読みやすさで書いたのかなと想像したが、どちらにせよ本で読む時の読みやすさを優先してほしい。もしくはこれもページ数稼ぎじゃないよね?
・あとがきがめちゃくちゃ寒い。別にあとがきには何書いたっていいじゃんとは思うのだが、それにしても寒すぎる。
最後に
これを読もうと思っている人がいたら今すぐ思いとどまってほしい。おすすめのライトノベル教えるから。ほんとに。
正直自身の見てから評価する価値観が揺らぐレベルの作品だ。
読んでもいない人が罵倒しているのを見るのは嫌だが、あまり人には読ませたくないと感じてしまった。……でもこれ読んでTwitterで暴れてる時にいいねしてきたフォロワーには読ませたい。
おしまい