二十年前くらいなら賛否両論止まりだったかも『ドラゴンクエストユアストーリー』
はじめに
コロナ渦で公開されるはずだった映画が次々と延期になってしまった。
今月は『実写版賭ケグルイ』、『ゴジラVSコング』、『クドわふたー』、『100日間生きたワニ』を見る予定だったが、全て公開延期になってしまった。なのでお気持ちブログに書くことが何もない。
別に書くことがないのなら無理に書くこともないのだが、どうせだし現在契約しているネットフリックスで作業中に見た映画の感想をネタバレありで語っていきたいと思う。
一本目は公開時悪い意味で話題になった『ドラゴンクエストユアストーリー』。
私は公開当時、この映画を実際に映画館へ見に行った。たしかに出来は悪いのだが、ネット上では実際に見ていないのに映画をこき下ろす人で溢れていた。
どんな作品も実際に見てから評価するのが私の心構えだ。それを他人にも押し付けるつもりはないが、ここで私が語るのも一意見でしかない。なので気になった人は実際にネットフリックスか他の配信サービス、またはレンタルショップ等で本編を見てほしい。
大胆なダイジェスト幼少期
この映画は『ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁』を題材としているのだが、当然壮大なストーリーを約100分でまとめることはできない。
そのためかなりカットしているのだが、ゲーム序盤に幼少期は最初の犠牲者だ。
主人公リュカの誕生から、ビアンカとレヌール城を探検するところまでをゲームを再現したドットで、ダイジェストの映像が流れる。本編はパパス死亡の直前から始まる。
そのせいでゲームを知らない人からすればビアンカとリュカがどのような関係なのか理解できないし、パパスのこともよくわからないだろう。ゲーム既プレイの人からしても、ビアンカのキャラ付けが原作と違いすぎて困惑するので誰も得をしていない。
結構出来のいい青年期前半
ゲーム本編通り、ゲマに捕まったリュカは奴隷となり、そのまま時が経って大人になる。
大人になったリュカと、一緒に捕まった王子ヘンリーは建設中の神殿から脱出し故郷へ帰還するのだが、やはりここら辺もかなりダイジェストでゲーム本編の内容をかなりカットしている。
神の塔で『ラーのかがみ』を手に入れて偽物の大后の正体を暴いたり、カボチの村で村民たちから糾弾される胸糞イベもない。
リュカはすぐにサラボナへ向かい、本来は青年期後半に行うはずのブオーン討伐イベントをこなす。
正直青年期前半は素直に楽しむことができた。たしかにゲーム本編とはかけ離れた内容なのだが、そのおかげで新鮮な気持ちで見ることができる。
脅迫に近いとはいえブオーンを仲間にする展開や、フローラとの結婚を断ったリュカに怒るルドマン、ゲーム本編ではすぐに役目を失うパパスの剣が活躍し続けるのもかなり満足だ。
深層心理に眠る意識に気づき、結婚相手をフローラからビアンカに変える展開は少し引っかかったものの、終盤のあれに比べれば大したことないものだった。
ここで終われば良作だった青年期後半
ビアンカと結婚し、二人の間には子供が産まれる。ゲーム本編では男女の双子なのだが、映画では男の子一人だけである。たしかにゲーム本編でも娘はあんまり役割ないけど、変な団体に怒られるのではないかと映画館で見た時は少し心配になってしまった。
ただ、娘がいても持て余すだけなのはなんとなく理解できたのでここはそこまで不満はなかった。
ちなみに映画にはグランバニアは出てこないので出産イベも石化イベも実家で行われる。それなのに主人公の名前にはグランバニアが入っている。そりゃ小説版作者も怒るわ。
石化から解放された後の青年期後半も基本的にはゲーム本編のイベントはほとんど起きず、やるのはオーブを回収するために過去へ行くイベントだけだ。
ただそれがダメというわけでもなく、個人的にはオリジナル要素の濃いゲマたちとの最終決戦など気にいっているシーンも多い。
大人になれ
ここからが最大の問題点。ゲマを倒してラスボスであるミルドラースが登場するのだが、突然リュカ以外のキャラたち全員が時が止まったかのように動かなくなってしまう。
そして現れたゲームとはかけ離れた姿をしているミルドラース(YS)は衝撃の真実をリュカに語る。
ここはバーチャルゲームの世界であり、リュカはそのプレイヤー。そしてミルドラースはその世界を壊すために作られたウイルスであると。
ミルドラース(YS)は製作者からのメッセージをリュカに告げる。「大人になれ」と。
まあ正直全ての真実が明かされる終盤はクソとしか言いようがない。そもそもゲームが悪なのかどうかといったテーマは十年以上前の作品から語り尽くされていて陳腐化してしまっている。
更に言えば黒幕であるウイルス制作者がやってることもただの嫌がらせでしかなく、その動機も幼稚としか言いようがない。その被害に遭っているのもただのプレイヤーの一人でしかないリュカの中の人だ。
……何が言いたいかと言うと、ゲームの善悪云々を語る土台にすら立てていないのだ。
ミルドラース(YS)の力に絶望するリュカだが、そこにスライムのスラリンが現れて更なる真実を告げる。
スラリンの正体はバーチャル世界を監視しているアンチウィルスプログラム(CV山寺宏一)だと。そして姿をロトの剣に変えて主人公に力を託す。
主人公の一撃でミルドラース(YS)は消滅してハッピーエンドを迎えるのだが、個人的には最後の武器がロトの剣というのが地雷すぎる。
題材となっているのは天空シリーズのドラクエⅤだ。天空シリーズにロトの剣は出てこない。シリーズファンへのサービス要素なのかもしれないが、余計なお世話である。
なら最後の武器が天空の剣だったらよかったのかと聞かれると、それも否である。Ⅴ主人公は勇者ではないので天空の剣を装備したらそれはそれで怒っていただろう。
だったら正解はなんなのか。その答えは終盤の展開を丸々カットすることだ。普通に現れた原作ミルドラースを倒してハッピーエンドの方が何百倍も良かった。
良かったところ
・終盤までは巻きの展開だったものの十分及第点の出来だった。
・パパス剣の活躍は素直に満足。
・ゲマ戦に駆けつけるヘンリーやサンチョ、ブオーンたちもかなり熱い展開だった。
・天空の剣の変形要素もかっこいい。DX天空ソードとしての商品化待ってます。
気になったところ
・ミルドラース(YS)、これに尽きる。
・あとキラーマシンをロボット呼ばわりしたり、ゲーム本編にはいない異物として扱っていたけど、ゲーム本編にもキラーマシン系列いたよね? 監督エアプ疑惑
最後に
正直これをやりたいんだったら題材はⅤでなく自由度の高いⅢあたりが良かったのではないだろうか。
……まあそれでも映画の評価は正直そんなに良くないと思うのだが。
色々と問題のある作品ではあるのだが、全部が全部最悪というわけでもないので、気になった人は是非見てほしい。
ゲマ倒したところで再生終了して大丈夫です。
おしまい