めるの備忘録

ゲーム、映画、本の感想を書きます。

リアルタイムだからこそ楽しめた日常漫画『100日後に死ぬワニ』

 2020年3月20日、丁度一年前に有名なキャラクターがたくさんの人々に見守られながら亡くなった。

 

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魔法少女にあこがれて、読んでください

 

 ワニだ。

 この日のことを私は今でも覚えている。駅のホームで電車を待ちながら、Twitterのタイムラインを眺め、その時を待ちわびていた。

 今思えば、キャラクターとはいえ大勢の人たちが彼の死の瞬間を待ち望んていたのは明らかに異常としか言いようがない。

 

 しかし、予定の時間になっても最終話は投稿されない。まさか死んでしまったから100日目の話は更新されないというくだらない結末なのではと疑った。

 結局10分ほど遅れて投稿された最終話は唐突にワニが交通事故に遭って亡くなるという、まあこれもくだらない結末だった。だが、その話の最初のコマでワニの友人が「遅いなぁ」とぼやいているのを見て、私は良い意味で作者の手のひらの上で踊らされていたと興奮したのを覚えている。

 

 たしかにしょうもないオチではあったが、ちゃんと死んでくれて良かった(?)と感じていたのも束の間、公式自らの手によってその余韻はぶち壊されてしまう。

 単行本、コラボカフェ、コラボ楽曲、映画化……次々と発表される商品展開に読者たちは困惑した。

 私は所謂『嫌儲』と呼ばれる思想は持っていないので、別に商品展開すること自体には何も思わない。しかし鉄は熱いうちに打てとは言ってもタイミングが早すぎるだろうと複雑な気分になった。せめて翌日の発表だったら、もう少し素直に受け入れることができたかもしれない。

 そして後日電通案件の疑惑もあり『100ワニ』はオタク界隈で大炎上となってしまった。電通が関わってたからヒットは夢見すぎでしょ。サム8にも関わってたんだぞ。

 

 

映画前の復習

 何故今更になって単行本を購入したかのだが、2ヵ月後に公開される映画を見る前に一度復習しておこうと考えたからだ。

 

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※思ってたより評価高いね

 

 私は大体30日目辺りから読み始めたのだが、その時にはもう既にブラックジョーク的な話の造りから一日一日を大切にという安っぽいメッセージのノリに変化していた後だったので、単行本序盤は新鮮な気持ちで楽しむことができた。

 自分がいつ死ぬか知らないワニは何カ月も先の予定を作るが、神の視点でワニがいつ死ぬか知っている読者はその予定が果たされないことも知っていて、何も知らないワニを嘲笑う。かなり悪趣味なブラックジョークだ。

 問題は中盤以降、話のメインがワニたちのただの日常になってからだ。正直に言ってしまうと話に起伏がなさすぎて退屈だ。連載当時は毎日少しずつ更新されているのもあって「明日はどうなるんだろう」「どうやって死んじゃうんだろう」と考える余地もあったのだが、単行本で一気に読む場合はただの作業。そしてなんの脈略もなく交通事故で亡くなるオチを知っているのもあって虚無感は倍増だ。

 

 

中身なんてほぼない書き下ろし

 とは言っても単行本にはTwitterでは読めない書き下ろしの漫画が収録されている。しかもその話はワニが亡くなった100日目以降の話だ。

 期待してページを捲ったのだが……肩透かしもいいところだ。

 たしかにその後の話が描かれているのだが、ワニがどうなったかについては一切描かれていない。友人キャラたちのただの日常が描写されているだけだ。

 正直このためだけに単行本を買ったのを若干後悔したレベルだ。

 全ページカラーであることを考えると適正価格ではあるのだが、やっぱりこれで1000円は割高に感じた。

 

 

オタクを嫌うオタク

 正直に告白すると、私は『100ワニ』にそこまで悪い印象は持っていない。 

 勿論電通によるステマが事実なら大問題だが、私はそれよりも当時のオタクたちが気持ち悪すぎて、そっちに悪い印象を抱いている。

 『100ワニ』連載中に作者とは全く関係の無い人間が投稿していた改変4コマ、その内容はワニが周りからいじめられているという酷いものなのだが、一番の問題は二次創作ではなく原作のコマをほぼそのまま使っていることだ(台詞は変えていた気がする)。

 無断転載に改変とアウトもいいところで、当然通報によって画像は削除されるのだが、あろうことか改変4コマを投稿していたオタクは悪びれることなく、そしてその信者たちも公式を批判するという異常な光景が広がっていた。

 最終話後の騒動も、オタクたちの嫌儲精神が嫌で若干冷めた目で眺めていた。

 まあただの同族嫌悪であることは理解しているのでこれはお気持ちでしかないです。

 

 

映画、ほぼ別物説

 2021年5月28日に、『100日間生きたワニ』と改題されて『100ワニ』の映画版が公開される。

 ただやはり原作そのままでお出しされたら退屈な作品になってしまうだろう。

 映画版では100日後のパートがメインになりそうだが、原作の書き下ろしや作者のTwitterを見ていると映画はオリジナル要素がほとんどになりそうな気がする。

 オリジナル要素で物語の起伏を生み出せば映画としてしっかり見れる一本にはなりそうだが、『100ワニ』の魅力ってほんとになんでもないただの日常なんじゃないかなぁと思うと複雑な気分だ。まあ見に行くけど。 

 

 ……でもオタクくんはどんな内容だとしてもどうせ見ないで叩くんだろうなぁ。それでプペルの時みたいに見てる人もバカにするんだろうからほんと草。

 

 

おしまい