めるの備忘録

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【ネタバレあり】1週間弱でエヴァを履修したにわかが映画館で号泣した話 『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』

2時間半の上映時間 VS 花粉症のリリン

 この1週間、私はエヴァンゲリオンのシリーズをゼロから履修し、そして沼にドハマりした。

 だが、完結作であるシンエヴァを見る直前、不安がなかったと言えば嘘になってしまう。また『Air/まごころを、君に』や『Q』のような作品になっていないだろうかとソワソワしながら映画館でチケットを購入した。

 

 それと不安要素がもう一つ、上映時間だ。シンエヴァの上映時間は約150分、2時間半もある。25年という長い時間で当時少年だったファンもおじさんおばさんになってしまった。身体は老化し、長時間の上映に膀胱が耐えられなくなっている話はTwitterでよく見かけていた。

 私もそれなりに近い体質なのだが、それ自体は朝から飲食を控えることで対策ができた。しかし、最大の問題があった。

 私は重度の花粉症だ。昨今映画館でのマナーが問題になっているが、くしゃみや鼻をかむ行為自体は生理現象でありマナー違反ではない。それでも迷惑に感じる人はいるだろう。だからこそ、私は2時間半鼻水を我慢できるかが不安だった(幸運にも雨のおかげでほとんど鼻水は出なかったのだが)。

 

 というわけで、『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』を見てきたので感想をネタバレありで語っていきたいと思う。

 

 

壊れてしまったシンジ君

 『Q』の終わりで精神崩壊してしまったシンジ君だったが、シンエヴァ前半での彼は台詞がほぼなくずっと心の殻に閉じこもっている。そんな彼にニア・サードインパクトを生き残ったトウジとケンスケ、そしてトウジと結婚した委員長は優しく接するのだが、それでもシンジ君は閉じこもり続ける。

 それとは逆に、アヤナミレイ(仮称)はトウジたちが暮らす第三村での生活で徐々に人間性を得ていく。

 

 旧シリーズでもあったのだが、やはりシンジ君が壊れるパートが一番見ていて辛い。しかも今回は周りの人間が優しさもあってシンジ君は後悔で押しつぶされてしまう。

 そんなシンジ君が立ち直るのにかなり長い尺を割いているのだが、これといって劇的なイベントがあるわけではない。ただの日常生活が、碇シンジという少年の心を癒していく。

 

 

初恋の終わり

 シンジ君を気に掛けるアヤナミレイ(仮称)に対してアスカが警告をする。私たちはサードチルドレンであるシンジ君に好意を持つようにプログラミングされていると。

 完結作で衝撃の事実が発覚する。アヤナミレイ(仮称)だけではなく、式波・アスカ・ラングレーも人為的に生み出されたクローン人間だったのだ。まさかの展開だったが、これで名前が旧シリーズと違う理由にも納得した。しかしレイとアスカのクローンはシンジ君に好意を持つという設定が性格悪すぎて笑ってしまった。

 ある意味これこそが、ヒロインという枠に固定されてしまった二人にかせられた、エヴァという作品の呪いなのかもしれない。

 

 しかし、アスカにとってシンジ君は過去の男であり、本編では28歳になったケンスケといい雰囲気になっていた。

 

NTRやんけ~~~~~~~!!!!」

 

 寝てから言えにゃと言われそうだが、本編でのケンスケは精神的にもかなり大人に成長していて、見た目の雰囲気は加持にも似ている。クローンからオリジナルに近づいたアスカがケンスケに惹かれる理由としてはかなり説得力があると感じた。ただシンアス派にはご愁傷様としか言いようがない。

 

 

大人になれ

 終盤ではシンジ君とゲンドウの一騎打ちとなり、ゲンドウの思惑が明かされる。それ自体は『Air/まごころを、君に』でも描かれていたのだが、本作では彼の内面も描かれている。

 ゲンドウもシンジ君のように他者を怖がる子供だった。クラスメイトの家に行くことを恐れ、親戚の集まりを恐れ、本やピアノを好む内向的な少年だった。今回のことでゲンドウに共感する人も多そう。

 そんな彼の孤独を癒したのが、ユイだった。二人は結ばれ、シンジ君が産まれる。

 しかしユイは初号機と融合、消滅してしまった。だからこそゲンドウは妻と再会するために人類補完計画を利用する。

 

 子供のまま大人になってしまったゲンドウと成長したシンジ君の対話を見ていて、私は『ドラゴンクエストユアストーリー』で語られた「大人になれ」というメッセージを思い出した。しかし本作ではユアストのような上っ面だけのメッセージではない。

 勿論長年のシリーズの積み重ねというのもあるのだが、私はシンジ君の成長に泣いてしまった。1週間の関係だというのに既にシンジ君に対して親心を抱いてしまっていた。

 

 

制作陣に、ありがとう

 エンディングでは数多くのアニメ制作会社がクレジットされていた。

 カラーだけではなく、ufoやSILVER LINK.にYostarと知っている名前がチラホラあり、日本中の制作会社のほとんどが参加しているんじゃないかというレベルだ。

 

 そして宇多田ヒカルさんが歌う主題歌の「One Last Kiss」と「Beautiful World」も素晴らしい曲なのだが、本編を見てから歌詞を見ると完全にゲンドウを歌ったもので笑ってしまった。

 

『もしも願い一つだけ叶うなら 君の側で眠らせて』

 

 ……完全にゲンドウのイメージソングじゃん。

 

 

カプ厨に、さようなら

 本作のラストでは大人になったシンジ君たちが描かれるのだが、先程書いたアスカとケンスケの関係もそうだが、今までのカップリング論争をかなり覆すようなカップルが誕生している。

 というかシンジ君とマリに関しては庵野総監督と奥様の馴れ初めなのか?

 

 だが、綾波レイとアスカ、そして渚カヲルがヒロインという枠から解放され、更に大人シンジ君の声を神木隆之介さんが演じることが、真の意味でキャラクターたちがエヴァの呪縛から解放された瞬間ではないだろうか。

 

 

そして、全ての古参ファン≪チルドレン≫に

 私のような新参者がこんなことを偉そうに言うのはおこがましいかもしれないが、それでも言わせてほしい。

 25年もの間シリーズを追い続けたファンの皆様、お疲れ様でした。

 そして……

 

おめでとう

 

おしまい